経営トピックス(バックナンバー)
令和5年の経済対策に基づき、経済をデフレに後戻りさせないための措置の一環として、納税者
及びその配偶者を含めた扶養親族ひとりにつき、令和6年分の所得税から3万円、令和6年度分の個人住民税から1万円が減税される定額減税が実施されます。
納税者本人と扶養親族(配偶者を含む)の数から算定される減税額が、定額減税を行う前の税額を上回っており、定額減税しきれないと見込まれる場合は、自治体(市区町村)から定額減税しきれない差額が給付される仕組み(調整給付)となっています。
この調整給付では、令和5年の課税状況(所得税・個人住民税)に基づき定額減税で引ききれないと見込まれる概ねの額が支給される「当初給付」、令和6年分の所得税と定額減税の実績額が確定した後、「当初給付」では不足する金額があった場合に追加で給付される「不足額給付」が行われます。
調整給付がある場合は、個人住民税が課される自治体から納税義務者に案内(通知)があるということですが、その手続きや具体的な給付方法は自治体ごとに異なるうえ、申請期限も設けられるため十分な注意が必要となります。
詳しくはこちらをご覧ください。
「「内閣官房HP~新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置~」」
「「浜松市HP~令和6年度定額減税しきれないと見込まれる方への給付金(調整給付金)~」」
小規模企業共済制度は、個人事業主や中小企業の役員を対象としたもので、将来個人事業を廃業した時、役員を退任した時に、それまで積み立てた掛金に応じて共済金を受け取れる制度です。
小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
不動産賃貸業を営む方※は、個人事業主となりますので、この小規模企業共済制度に加入できます。ただし、サラリーマンの方は加入資格がないため、個人事業主として不動産業を兼業していても加入できませんのでご注意ください。※事業的規模(いわゆる5棟10室基準)が必要。
・払込掛金が全額所得控除の対象になります。掛金は月額千円から7万円の範囲で自由に設定でき、月額7万円の場合は年間84万円の所得控除が受けられます。
・共済契約者が亡くなり、遺族が共済金を受け取る場合には、死亡退職金の非課税枠を適用できます。法定相続人が3名の場合は「500万×3名=1500万」までは非課税となります。
この非課税枠は生命保険金の非課税枠とは別枠となり、相続対策としても活用できます。
・高齢者の不動産オーナーが加入後6か月未満で亡くなられた場合、共済金は出ません。少額で加入し、6か月経過後に増額することを検討しましょう。
・遺族が受け取る共済金は、遺産分割の対象ではなく、受給権順位が決まっています。民法上の相続の一般原則とは異なり小規模企業共済法に規定されているため確認が必要です。
詳しくはこちらをご覧ください。「小規模企業共済・中小機構」
電子取引データについて紙出力を容認してきた「宥恕措置」が令和5年12月末をもって廃止され、令和6年1月1日以降は、電子取引データを電子保存することが義務となります。
・電子メールで受領した「請求書」や「領収書」
・インターネットサイトでの物品購入
・電気、ガス、電話など公共料金の請求内容をインターネット上で入手
・クレジットカード、ETC、ガソリンの利用明細をインターネット上で入手
・PayPay、楽天Pay、d払いなど電子決済サービスの利用明細書
TKCのFXシリーズに搭載された「証憑保存機能」は、電子取引データや紙の証憑を読み込み、TKCのデータセンターに電子データとして保存するサービスです。インターネット上の電子取引データを、ブラウザの印刷操作だけで簡単に取り込めるTKC証憑保存ツール(プリンタドライバ)が内蔵されており、紙の証憑は卓上タイプのスキャナなどで読み取ることができます。また、スマホに専用アプリを登録すれば、証憑をスマホで撮影するだけで電子データとして保存できます。電子取引データの保存には、法的要件を満たしたFXシリーズ搭載の証憑保存機能をぜひご検討ください。
詳しくはこちらをご覧ください。「FXシリーズ証憑保存機能」
厚生労働省は7月1日から7月7日までを「全国安全週間」として、各職場における巡視やスローガンの掲示、労働安全に関する講習会の開催などの取り組みを実施します。「全国安全週間」とは昭和3年に初めて実施されて以来、人命尊重という基本理念の下、産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ることを目的に、一度も中断することなく続けられてきました。
令和5年度は、「高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場」がスローガンとなっており、各職場で労働災害を少しでも減らすため、労使一丸となった取り組みが求められています。ひとたび労働災害が発生すると、会社・個人ともに大きな打撃となります。職場内で安全に対する意識を共有し、事故防止に努めていきましょう。具体的な実施事項につきましては厚生労働省ホームページにある実施要綱をご確認ください。
① 安全衛生活動の推進(安全衛生管理体制の確立・安全衛生教育の計画と実施)
② 業種の特性に応じた労働災害防止対策(小売業・運送業・建設業・製造業)
③ 業種横断的な労働災害防止対策(作業行動に起因する労働災害対策・交通労働災害防止対策)
詳しくはこちらをご覧ください。「第96回全国安全週間リーフレット」
政府は昨年12月に経営者による個人保証を減らしていくことを目的とする「経営者保証改革プログラム」を公表しています。民間の自主規制に過ぎない従来の「ガイドライン」では経営者保証の解除が進まない実態を踏まえ、抜本的な状況改善を促すために政府がとりまとめたものです。
内容としては、①スタートアップ時の融資を無担保とする「創業融資制度」の創設、②新規融資については経営者保証をとらないことを原則とする「金融機関に対する規制強化」、③既存融資の経営者保証を解除できる「信用保証付き融資」の新設と大きく分けて3つの施策が盛り込まれています。
従来の「ガイドライン」はあくまで民間団体の指針であり努力義務を示したものに過ぎなかったのですが、今回の「改革プログラム」は政府が金融機関に対して具体的な義務を課した点が特徴となっています。金融庁は令和5年4月以降、各金融機関に「経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針」の公表を求めています。経営者側も個人保証なしで融資を受けるためには、下記の要件を満たすことがが求められます。
・どの部分が十分ではないため個人保証が必要となるのか
・どのような改善を図れば個人保証の解除の可能性が高まるのか
・法人と経営者との関係の明確な区分・分離
・財務基盤の強化
・財務状況の正確な把握
詳しくはこちらをご覧ください。「経営者保証改革プログラムに関する事業者向けパンフレット」
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、基準期間の課税売上高が1,000万円以下等の要件を満たす免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合には、消費税額の計算上控除することができる消費税額(仕入税額控除)の金額を、売上にかかる消費税額に8割を乗じた金額とすることにより、納付税額を預かった消費税額の2割とすることができる特例措置が創設されることとなりました。
この適用を受けるためには、事前の届出は不要ですが、消費税確定申告書に適用を受ける旨を付記する必要があります。なお、簡易課税制度選択届出書を提出している場合においても、申告時に2割特例か簡易課税のどちらを適用するか選択が可能です。ほとんどの場合、2割特例を適用するほうが有利になると考えられます。
国税庁は10月7日に副業収入の所得区分等に関する「所得税基本通達の制定について」の一部改正(法令解釈通達 課個2-21ほか2課共同)を公表しました。8月に出された元の改正案では、副業収入300万円以下の場合には雑所得に該当する旨が示されていましたが、今回公表された改正通達では、上記内容が削除された上で、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がある場合には、概ね事業所得に該当する旨が示されています。
ただし、事業所得への該当性は社会通念で判定することが原則であり、社会通念上事業と称するに至る程度か否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における企画遂行性の有無、④その取引に費した精神的あるいは肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥その取引の目的、⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合勘案して判定することになります。帳簿書類の保存があれば事業所得になるとは言い切れない点には留意しておく必要があります。今回の改正通達は令和4年分以後の所得税に適用されます。
周知のとおり、令和5年10月1日から消費税の適格請求書等保存法式(インボイス制度)が始まります。インボイス制度の開始は、経理事務のみならず、企業間の取引、経営にも影響し、特に免税事業者はインボイス制度への対応の検討が必要となります。
インボイス制度実施後に消費税の仕入税額控除を行うためには、仕入先事業者からインボイスの交付を受け、これを保存しなければなりません。インボイスを発行できるのは所轄税務署長の登録を受けた課税事業者のみであり、免税事業者はインボイスを発行することができません。
ここで免税事業者は次の選択を迫られることとなります。①適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し消費税課税事業者となる。②免税事業者のままでいる。
どちらを選択しても経営に大きな影響が出ることは間違いありません。免税事業者は消費税を納めていませんが、売上に際して消費税を収受しているケースが多く、その消費税の収受金額はそのまま免税事業者の利益となっています。免税事業者が消費税課税事業者を選択すれば、この利益が失われることになり、経営(資金繰り)に悪影響が出てしまいます。
また、免税事業者のままでいても、取引先から取引自体の見直しや価格改定要請を受ける可能性があります。このような免税事業者の事情に配慮し、令和5年10月1日~令和8年9月30日の3年間は仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日~令和11年9月30日の3年間は仕入税額相当額の50%の仕入税額控除を免税事業者との取引において認める経過措置が設けられています。
免税事業者は取引先の状況や意向を確認するなど、インボイス制度開始による影響を十分に検証していく必要があります。また、免税事業者を仕入先に持つ事業者にとっては、下請法の考え方にも理解が必要になります。インボイス制度への対応については、まずは当事務所にご相談ください。
(参考)
「インボイス制度公表サイト(国税庁HPより)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm
「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法の考え方(公正取引委員会HPより)」
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice/invoice_jirei.pdf